Description
1970年直前にこれからの時計の機械自体が水晶振動子と電子回路から成る電池時計へと大きく舵を切るクォーツショックと呼ばれた一大変革期が静かなスイス山間部の時計産業を襲いました。 機械時計の製造で言えば各社クロノメーター基準の高精度な機械を安定的に製造できる域まで達し、そのキャリバーが次第に薄型キャリバーに移行してゆくという正にその水面下で全く違う機構の機械が作られた事に因って根本的に工場生産ラインの変更を余儀なくされる資本の増強という観点でも非常に悩ましい状況へと追い込まれて行きました。 しかし機械式時計メーカーは対抗するというよりは受け止めこれまでの歩む道を絶やすことなく進むしか道は残されておりませんでした。 その様な状況下で電池時計による急激な変化に対抗する手段としては時計デザインを大幅に変更し新たな流行を生み出すというミッションに舵を切って行きました。具体的にはケースを大型化する事、文字盤を多色使いにして時間を知るトゥールからより装身具としての面白さに重きを置く、具体的にはケース共々デザイン化で勝負する事にシフトして行く事でした。 メーカーにも因りますがオメガ社で言えば特にその部分での新しい流行を求めた時計がいくつも作られました。
このモデルはそうした流れの直前に作られた以後のオメガ社の思い切ったデザインを重視した製造方針を窺わせるものの中の一つと言えます。
オメガのクロノグラフに関して
オメガ社のクロノグラフはスイス時計業界の中で、懐中時計の時代に始まり、腕時計の時代の到来を受けても、陸・海・空全ての乗り物の飛躍的発展、計時を伴うスポーツ競技の普及等それらに伴う需要の増加を中心に常に時計業界の中で屈指の中心的メーカーの一つで有り続けました。 中でも宇宙開発におけるアメリカの月面着陸計画での公式時計としてのスピードマスターの採用はオメガ社のクロノグラフを最も有名にならしめる大きな史実となりました。
以来1970年代には電池時計(クォーツ時計)の普及という大きな変革の中に於いても常にクロノグラフの進化を止めることなく進めた中で、数々のクロノグラフが誕生しました。機械的には自動巻きのクロノグラフの製造はオメガ社が当時中心的課題として進めていた事業の一つでした。 オメガのスピードマスターのメインキャリバーであった手巻きのキャリバー861の派生版としてこのクロノグラフが作られました。このクロノグラフは正式名称ではありませんが、世界の中心的競技の一つ、サッカーの審判用に作られた物と云われており、いつしか「サッカータイマー」と呼ばれるモデルとなっております。 オメガ社のモデルの一つとして長くウォーターレジスタントモデルの象徴として名付けられたSeamasterモデルのクロノグラフの一つです。特徴としては、30分積算計のスケールに赤と黒のツートーンで15分毎に下地の色で経過分が分かりやすく色別され、競技時間が45分×2となる為、30分計の一番下に45の目盛りを設けて45分経過を分かりやすく認識できるようになっている点です。 実際に大会で公式公認時計として使われたかは定かでは有りませんが、審判員が個別で所有して多く使われたのは間違いない事かと思います。 実際には白、赤、黒、グレーと4色で構成された文字盤ですが、その視認性に関してはバランスの良いデザインで、この全体のオフホワイトの色彩はロレックスのポールニューマンモデルの白と同じ系統の色でもあるので、今日でも搭載キャリバーが861である事も含めて人気のモデルとなっております。









